工業用X線CTとは?非破壊で内部構造・寸法・形状を見える化

外観では分からない不具合をどう調べる?工業用X線CTスキャンで内部構造・寸法・形状を見える化

工業用X線CTスキャンは、製品を切断・分解することなく、内部構造を3Dで確認できる測定・解析技術です。

内部観察だけでなく、非破壊検査、寸法測定、3D CADとの比較、不具合解析、リバースエンジニアリングなど、製品開発や設計検証にも活用できます。

今回は、産業用CTスキャナの仕組みと、開発設計で役立つ代表的な活用方法をご紹介します。

1. 産業用CTスキャナとは?内部を3Dで確認できる仕組み

産業用CTスキャナは、対象物をさまざまな角度からX線撮影し、多数の透過画像を再構成することで、外から見えない内部まで3Dデータとして確認できる装置です。

一般的なX線透過撮影では、対象物の内部を2次元画像として確認します。

一方、産業用X線CTでは、X線源と検出器の間に対象物を配置し、対象物を回転させながら複数方向から撮影します。

取得した画像をコンピュータで再構成することで、内部・外部を含んだ3次元のCTデータを作成します。

工業用X線CTスキャンによる製品内部の3D・断面観察
工業用X線CTでは、製品を切断せずに内部構造や任意の断面を確認できます。

そのため、製品を切断しなくても、以下のような評価が可能です。

  • * 任意の位置で断面を確認する
  • * 内部の穴や流路を見る
  • * 組立状態の部品位置を確認する
  • * 内部形状や寸法を測定する

製品を切らずに、確認したい断面を確認することが可能

実物を切断して内部を確認する場合、一度切ると元の状態には戻せません。

CTスキャンでは内部を3Dデータとして取得するため、撮影後に断面位置や方向を変えて確認できることが大きな特徴です。

不具合箇所が明確でない場合でも、複数の断面を確認しながら原因を探ることができます。

さらに、取得したCTデータから寸法や形状を計測できるため、工業用X線CTは単なる内部観察装置ではなく、製品全体をデータ化して評価する測定・解析ツールとして活用されています。

2. X線CTスキャンでできる4つの代表的な活用方法

工業用X線CTでは、一度取得した3Dデータから「非破壊検査」「寸法測定」「CAD比較」「リバースエンジニアリング」などへ展開できます。

① 非破壊検査・内部観察

製品を切断・分解せず、外観からは確認できない内部欠陥や組立状態を確認できます。

例えば、以下のような確認に利用できます。

  • * 樹脂成形品内部の空洞・ポロシティ
  • * 鋳物内部の鋳巣
  • * 部品の組立状態
  • * 内部部品の破損・欠落
  • * 内部の穴や流路

特に不具合解析では、組立状態を維持したまま内部を確認できるため、分解によって部品位置や接触状態が変わることを避けながら原因を調査できます。

② 内部寸法の測定

通常の測定機ではアクセスしにくい内部形状も、CTデータから寸法・形状を評価できます。

内部穴の位置、円筒形状、曲面、肉厚など、これまで切断して測定する必要があった箇所についても、非破壊で測定できる可能性があります。

③ 3D CADデータとの形状比較

設計した3D CADと実際の製品形状を比較し、設計値との差を可視化できます。

IGES、STL、STEPなどの3DデータとCTデータを重ね合わせることで、偏差カラーマップなどによる形状比較が可能です。

数か所の寸法測定だけでは分かりにくい反り・変形・形状差も確認しやすくなり、試作評価や金型修正、成形条件の見直しにも活用できます。

工業用X線CTデータと3D CADの形状比較・偏差カラーマップ
CTで取得した実物形状と3D CADを比較することで、反りや変形、形状差を可視化できます。

④ リバースエンジニアリング

図面や3D CADデータがない部品でも、現物から形状を取得して3Dデータ化できます。

一般的な光学式3Dスキャナーでは取得しにくい内部形状も、X線CTであれば取得できる場合があります。

取得したCTデータをSTLデータとして出力し、必要に応じてCAD面を作成することもできます。

既存部品の再現だけでなく、現物をベースにした製品改良や再設計にも活用できます。

3. 工業用X線CTで内部観察から寸法測定まで

クロスエフェクトでは、内部非破壊検査だけでなく寸法測定や形状評価にも対応した、Carl Zeiss製の工業用X線CT「METROTOM 800 130kV」※を導入しています。

※CTによる寸法測定に関するドイツ工業規格「VDI/VDE 2630」に準拠

1回のCTスキャンで製品の内部・外部形状を取得し、そのデータを、内部観察、寸法測定、形状評価、CAD比較、STLデータ出力など、複数の目的に活用できます。

1つのワークから複数の情報を取得

「内部確認用」「寸法測定用」「CAD比較用」と別々にサンプルを用意するのではなく、一つのワークから複数の設計情報を取得できる可能性があります。

試作品を壊さずに評価できるため、CT測定後に同じサンプルを使って動作確認や追加試験を行うこともできます。

撮影条件は対象物と目的に合わせて設定

X線CTは、単純に高い解像度で撮影すればよいわけではありません。

対象物のサイズ、材質、厚み、形状、確認したい箇所によって適した撮影条件が変わります。

CT画像を構成する「ボクセル」の大きさやX線のフォーカスサイズなども、取得できる画像の細かさに影響します。

そのため、撮影前に対象物の状態を確認し、「何を確認したいのか」に合わせて撮影・解析条件を設定することが重要です。

4. 開発設計で役立つ工業用X線CTの活用事例

工業用X線CTは完成品の検査だけでなく、試作評価、不具合解析、金型修正、設計変更など、製品開発の途中でも活用できます。

Case1|外観には問題がないのに正常に動作しない

組立後に動作不良が発生している場合、分解すると本来の部品位置や接触状態が変わってしまうことがあります。

CTスキャンなら組立状態のまま内部を確認できるため、部品位置のずれ、内部干渉、嵌合状態、破損・欠落などを確認できます。

Case2|樹脂成形品の内部や肉厚を確認したい

外観には問題がなくても、樹脂成形品内部に空洞が発生したり、肉厚に偏りが生じたりする場合があります。

X線CTを利用すれば、製品を切断せずに内部状態を確認でき、CAD比較を組み合わせることで成形後の変形も評価できます。

金型修正前に問題箇所を確認するためのデータとしても活用できます。

Case3|3D CADと試作品の形状差を確認したい

CTデータと設計CADを比較することで、試作品全体の反りや変形、形状差を確認できます。

「測定した寸法は公差内だが、製品全体では変形している」といった問題の発見にも役立ちます。

Case4|外から測れない内部寸法を確認したい

内部に穴や流路、複雑な曲面がある場合でも、CTで内部まで3Dデータ化することで、切断せずに形状や寸法を評価できます。

Case5|図面のない部品を再設計したい

現物しか残っていない既存部品でも、CTで内外形状を取得し、STLやCADデータへ展開できます。

リバースエンジニアリングや既存製品の再設計にも有効です。

5. CTデータを設計改善へ

工業用X線CTの価値は、内部を見ることだけではなく、実際の製品状態をデータで確認し、次の設計変更や試作へつなげられることです。

例えば、以下のような場面でCTデータを活用できます。

  • * 初回試作後の形状確認
  • * 成形品の評価
  • * 金型修正前
  • * 組立不具合発生時
  • * 量産移行前の検証
  • * 図面のない部品の再設計

試作 → CTスキャン → 内部・寸法・形状を確認 → 設計変更 → 次回試作

という流れを取り入れることで、不具合の原因や形状差を確認してから次の判断へ進むことができます。

工業用X線CTは、完成品を検査するだけの設備ではありません。

試作品や実製品から設計に必要な情報を取得し、開発の手戻りを減らすための測定・解析ツールとして活用できます。

クロスエフェクトでは、製品のサイズ・材質・形状・確認したい箇所に合わせて、CT撮影・寸法測定・解析に対応しています。

「この製品はCTで確認できるのか」「どの解析方法が適しているのか分からない」といった段階からご相談ください。

FAQ|工業用X線CTスキャンについてよくある質問

Q1. 産業用CTスキャナとはどのような装置ですか?

A. X線を対象物に照射し、複数方向から取得した透過画像をコンピュータで再構成することで、対象物の内部・外部を3次元データとして取得する装置です。製品を切断せずに、任意の断面や内部構造を確認できます。

Q2. 工業用X線CTではどのような検査ができますか?

A. 内部欠陥、空洞、壁厚、組立状態などの非破壊検査に加え、内部寸法測定、3D CADとの形状比較、STLデータ出力、リバースエンジニアリングなどに活用できます。

Q3. CT撮影できる素材に制限はありますか?

A. はい。弊社保有設備では、対象物の材質・厚み・形状によって撮影が難しい場合があります。特に重金属や、複数の異なる材質で構成されたASSY品・複合素材は、撮影条件によって対応可否が変わるため、事前にご相談ください。

Q4. CTスキャンデータと3D CADデータを比較できますか?

A. はい。IGES、STL、STEPなどの3DデータとCTで取得した実物形状を比較できます。偏差カラーマップを利用することで、設計形状に対する反り・変形・形状差を視覚的に確認できます。

Q5. 測定したい製品がCT撮影できるか分からない場合はどうすればよいですか?

A. 対象物のサイズ、重量、材質、厚み、形状、確認したい箇所などをご共有ください。図面、3D CADデータ、製品写真がある場合は、あわせてご提供いただくことで撮影可否や適した解析方法を検討しやすくなります。

まとめ

工業用X線CTスキャンは、製品を切断せずに内部構造を確認できるだけでなく、寸法測定、CAD比較、不具合解析、リバースエンジニアリングなど、製品開発のさまざまな場面で活用できます。

特に、外観からは分からない不具合や内部形状を3Dデータとして取得できるため、試作評価や設計変更、金型修正前の検証などにも有効です。

クロスエフェクトでは、CT撮影だけでなく、寸法測定や形状評価、CAD比較など、確認したい内容に合わせた解析に対応しています。

工業用X線CTでの測定・解析をご検討の方へ

「外観では分からない不具合を確認したい」「内部寸法を測定したい」「CADと実物の形状差を確認したい」「この製品がCT撮影できるか知りたい」といった段階からでも、お気軽にご相談ください。

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